10月中旬の鮮やかな穂高

涸沢岳山頂から奥穂高岳方面 上高地から北アルプスの穂高連峰を親一人連れて歩いて来ました。 実際に立った山頂は涸沢岳(3110m)と奥穂高岳(3190m)の2峰。 ちょうど一週間前に初冠雪をしていたので、天候が直前まで気がかりでしたが、抜群に晴れた3日間になってくれて良かったです。 上高地→横尾山荘(1日)、横尾山荘→穂高岳山荘(2日)、穂高岳山荘→上高地(3日)の十分にゆっくりな行程を組んで、北穂高岳から涸沢岳を経由することも体力的に危なかったのでやめたために大分快適な山行になりました。 快適といっても北アルプスの3000mなので、2500mくらいを超えると所々は鎖を握って急峻な岩の山肌を登っていく感じになります。 写真はザイテングラートと呼ばれる岩尾根上部。横尾山荘から約1200メートルは登った地点で、涸沢の紅葉がとても美しく眺められました。 13時くらいには山小屋に到着して、涸沢岳を往復してから小屋の図書スペースにて温かいストーブの前で夕方まで植物図鑑を見てました。こういう時間というのは、日々下界でせわしなく働いていると、とても贅沢で、あってはならないようにすら感じてしまいます。 そして夕方近づくと、図書室の窓からゆるやかに日が水平線を赤くし始めるのが見えてきます。 夕飯はこのタイミングを良くわかっているようで、ちょうど見終わった直後くらいにスタート。 そして食後は寝るのみ。20時就寝4時起床。 翌日は氷点下の中、朝日が上がるのを眺めながら朝食。 準備運動をした後に、山荘横の垂直に近い岩場のハシゴや鎖場を緊張感をもって登っていくと40分ほどで3190m奥穂高岳山頂。 山頂も狭い岩場で、小さな祠と方位盤が置いてある他は絶景あるのみ。 下は山頂から南の方角を見たもの。 右側の稜線は西穂高岳へと続く難ルートとその奥の焼岳、乗鞍岳、更に奥の木曽御嶽山が見え、梓川の流れる上高地を挟んで左側には明神岳、霞沢岳、木曽の山々の奥に中央アルプス、南アルプスが見えます。また写真の真左あたりには富士山と隣の前穂高岳が見え、写真の後ろ方向には、槍ヶ岳、剣岳、鹿島槍ヶ岳、常念岳、水晶岳、白馬岳あたりまで北アルプスの他の名峰や、白山、北信の山々まで眺められ、久々に心揺さぶられました。 長時間居られるほど広くない山頂なので、その後は足早に隣の前穂高岳方面へ進みますが、またこの稜線も鋭く、足元50cmくらいの細く右側の落ちているルートを進みます。 雨の後はかなり神経を使いそうな道です。 上の写真は奥穂高から前穂高岳へのルート、原寸にしないと道がよく見えませんが、途中の下の場所は、逆方向からだと丸印がよく見えなくて、どこを降りれば落ちないのだろうかといった具合。 私にはまだこういう場面で一人で冷静に適切な判断ができるかどうか怪しいところがあるので、北アルプスの単独はまだ無いなと感じます。もっと慣れねば。 この岩場を過ぎると、紀美子平と呼ばれる、若干広い岳沢方面と前穂高岳山頂方面への分岐点にたどり着きます。 同行の体力事情から前穂高岳山頂はスルーしてそのまま岳沢(下の写真)の方へ降り始めますが、こちらも岩場の急降下で、特に紀美子平直下は長い鎖を握りながら斜度のある大きく平滑な滑りやすい岩のわずかな足場を使って降りていきます。カメラを首からぶら下げられない状態だったので、このへんから岳沢の紅葉に囲まれる辺りまでは、写真も撮れませんでしたが、まあとにかく、鋭い稜線と下の美しい木々の色を見ながら鎖場とハシゴを降りて行きます。 下に近づくにつれて、日のあたり具合もあるのでしょうけれども、涸沢よりも見事な色に染まった岳沢の紅葉がご褒美のように登山道の周りを彩ります。 街中の紅葉の楽しみ方というのは一色に染まった紅や黄の木々を建物や道路などの人工物と合わせての場合が多いですけれども、こうやって山の中で見る色の豊かさはその価値観を崩してくれます。空の色、岩肌の色、多様な木々の色、清冽な空気、穏やかな日光、こういう要素の絶妙な絡み具合が生み出す感動は一入です。 岳沢まで降りれば、あとは比較的なだらかな下り坂を上高地まで1時間半。 他の観光客に混じりながら河童橋を渡ってバスターミナルへ到着。 上高地は通年マイカー規制をしていますが、それが当然に良いなと思ってしまうのは、音の静けさや最低限の道路と駐車空間によって守られる景観があってのこと。現代の車社会で上高地をマイカーOKにしてしまったら、大正池を埋め立てるか、梓川周辺の森を消して駐車場にしないと収まらないでしょう。また、赤城山のようにバイクの激しいエンジン音、排気音や場合によっては暴走族が発する音も相当なものになるでしょう。そうなれば、もはや上高地が上高地ではなくなってしまいますから。 南アルプスの芦安より奥の南アルプス林道も同様。もしマイカーで入れないなら行かない、という観光客がいるなら、それは排除して構わないというくらいに、守る価値のある景観が残された素敵な場所です。日本の観光地はもっと来る人間を選んでいいと思うのですけれどもね。それを付加価値にできる力のある観光地ってのはなかなか難しいのでしょうけれども、私はそういう場所へ行きたいです。 帰りはハイブリッドバスに乗って上高地を後にして、新島々で旧松本電鉄に乗り換えて30分で松本駅に到着。特急あずさで帰宅。 次の3000m級の登山はおそらく来年の秋以降。山が長い冬を越えた頃には私の仕事もどうなっていることやら、と求人情報見ながら、履歴書テンプレ作りながら、旅行計画立てながら考えてます。